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知っテミル

ソーシャルファームとは

社会福祉法人恩賜財団済生会 炭谷茂先生インタビュー 02

2. 日本にもソーシャルインクルージョンを!

■炭谷茂先生:
そうすると、それに対して何をしたら良いのかなっていうことですけども、私はここでしっかりとやはりヨーロッパを中心として発展しているソーシャルインクルージョンという理念をですね、日本社会でもしっかりと考えて、それに基づく政策というものを考えてみなくてはいけないのではないのかなっていうふうに思うんですね。もう、イギリスやフランスやドイツ、イタリアなんかではね、ソーシャルインクルージョンという理念が社会政策なり政治の基本理念に今なっているんですね。

しかし、なぜか不思議なことに日本社会ではなかなかそういうものが理解されないんですね。その原因というのはよく分からないところですけども、1つやっぱり一番大きな理由と言うのは、日本社会の場合はヨーロッパと違って、ヨーロッパの場合は社会的な排除というのが割合、目に見える形で表れるんですね。例えば、外国人を暴力的に追い出そうとする形で表れるんですけども、日本の場合はそこまでは至らないんですよね。もちろんホームレスに対する襲撃事件などは時々起るんだけれども、障碍者・高齢者に対してそういう暴力的な動きというのは、割合日本ではないと思うんですよね。しかし、日本社会はむしろ社会の中でこれらが、自分たちで孤立をしてしまう。そういう面の方が強いんですね。なかなか、それは行為として社会的な認識として高まらない原因ではないのかな、というように思っています。

しかし、だんだん世の中というのは国際社会というのはグローバル化していって、社会問題がだいたい共通しているんですね。共通化しているということになればですね、やはりヨーロッパで割合成功しているソーシャルインクルージョンの理念に基づく政策というものは、一行してみる必要があるということで、私はそれを訴えているわけです。

「ソーシャルインクルージョンをめざす」
そこで問題は、ソーシャルインクルージョンというものを、具体的にどのように形にするか、それがポイントだと思うんですよね。ソーシャルインクルージョンというのは、まぁ社会から排除されたり孤立 しがちな人たちを社会の一員としてしっかりと位置付ける、迎え入れるということだと思うんですよね。そのためには、やはり私は具体的な活動が必要であるというふうに思っています。単に、こう「差別をなくしましょう」といったような、社会教育や社会啓発だけでは進まないんだと思うんですね。そうするとその具体的活動とは何なのかなと言えば、私が一番大きいのは、「働く」ということと「教育」という二点じゃないのかなと思っているんですね。

そこで、第一の「働く」というのは、私は働く場所というのは、現在、第一の職場として「公の職場」、まぁ税金でやっているような制度的な職場があると思います。しかし、実際用意されている仕事がですね、非常に限られていてですね、障碍者の中ではどうも自分はそういうところの仕事が合わないという人の方が多いというのが現実だと思うんですよね。でも、第一の職場でないと働けないという人もいるというのは事実なので、それはますます充実をさせていかないといけないと思います。

それから第二の職場というのは、これはやはり一般企業ですけども、大企業は1.8%雇用しなくてはいけない。しかしその1.8%自身もヨーロッパに比べれば、ヨーロッパではだいたい4%前後を設定している。(日本は)数値が低いうえに、1.8%自身が達成できていないという問題があると思います。それから、大企業においてですね、はたして障碍者を本当に適切・適当な仕事をしてもらっているかといえば、どうも人によってはね、そういうふうになっていない。企業では法律でそうなっているから雇用する、という形になっていてですね、必ずしも障碍者の尊厳を高めるような働き方になっていないことも現実には多いんじゃないかと思います。ただ、そういうのは改善していってですね、できれば一般企業で障碍者が働けるというのは大変いい事だと思っています。それは進めなくてはいけないと思っています。

「これまでにない新たな『働く場』へ」
それから日本の障碍者の定義は他の先進国に比べれば狭いと、特に発達生涯を中心にして狭いのではないのではないかと思います。そこから落ちてきている人がいる、ということを考えれば、1,000万人ちかく実際は障碍者がいらして、仕事の面なり社会との関係性で悩んでいる人がいっぱいいるわけですね。そういう状態で、そういうボリュームの大きいことを考えるとですね、どうも第一の職場と第二の職場のだけでは十分に対応しきれない。どうも第三番目の職場というものが必要じゃないかなというふうに思っています。 それを、私は、よく最近日本で言われるようになったソーシャルエンタープライズ、アメリカ的に言えばソーシャル・ビジネスと呼んでいますけど、そういう「社会的企業」というものが重要だと思います。そのなかの1つの形態としてソーシャルファームというものがあるというように私は位置付けています。

まぁ、第三の職場というのは目的は高齢者や障碍者などの雇用、という社会的な課題を達成しようという目的であるけれども、第二の職場のように税金をあてにするのではなくて、自分たちでまずビジネス的にとにかくやってみよう、というところに特色がある。また、その仕事自身が障碍者が高齢者が単に「働く」というだけじゃなくて、自分にあって人生に生きがいをもつような仕事に就ける、そして、そういうものについて住民の方々が支援をしてくれるという場が第三の職場、社会的企業の特色なわけですね。

そこで、ソーシャルファームについていえば、ヨーロッパにおいて今では10,000社以上できているということです。日本とヨーロッパとの人口の割合からして、だいたい1/5が日本の人口ですから、そうすると日本にはだいたい2,000社あってもいいのではないのか、ということで、3年前からソーシャルファームを日本に2,000社作ろうということを今呼びかけているわけです。

ソーシャルファームは、障碍者だけではなくて、高齢者もニートや引きこもりの若者、刑務所から出てきた人、また、母子家庭の母親、そういう社会的になんらかのハンディキャップをもっている人が働く場所というふうに考えていますので、私はざっと見てですね、2,000万人の人のための第三の職場、そしてその中心の1つがソーシャルファームだろうというふうに思っています。